マジすかHKT~第四十八話

「いけっ、ハート・プラカード!」

麻友の右手から放たれた、スクエア状のエネルギー体が、回転しながら指原に迫る。

その指原は、麻友の技を見ることもなく、下にうつむきながら、何かつぶやいている。

「咲良、はるっぴ、みんな・・指原に力を貸して!」

指原のつぶやきが聞こえることもなく、
ハート・プラカードが指原の顔が隠れるまで近づくのを確認した麻友は、勝利を確信した。

”バシィィッ”

「何っ!そんな、まさか・・。」

当たったかに見えた、ハート・プラカードは縦回転をしながら、指原の目の前で宙に浮いていた。
そして目を凝らした麻友が見たのは、白刃取りでハート・プラカードを受け止めている、指原の姿だった。

「くっ・・うぅっ。」

ハート・プラカードを、歯を食いしばって受け止めた指原だったが、
その威力に押され、踏ん張っていた足が、少しづつ後ろに滑り始めた。

その時だった。
両の腕に、今までにない力がわき出るのを感じた指原は、ハート・プラカードを一気に押し戻した。

「うぉぉぉぉーっ!」

指原の手から離れたハート・プラカードは、麻友の左手前のフィールドで反射すると、そのまま壁に衝突して、四散した。

「ハート・プラカードを押し返すとは・・。」

はね返されたハート・プラカードの行方を見ていた麻友は、指原がいる方に視線を移すと、さらに驚愕した。
指原の右肩に手を置いているのは、咲良と呼ばれていたメンバー、
そして左肩に手を置いているのは、はるっぴと呼ばれていたメンバーの姿だった。

「さっき倒したはずなのに、何で・・。」

そう思った麻友は、指原の後ろを見てみると、やはり二人の身体は床に倒れたままになっている。
そして指原の方に手を置いている二人を見返してみると、後ろの壁も一緒に透けて見えていた。

「二人の指原への想いが、力となって現れているのか・・。」

そうつぶやいた麻友は、続けて指原に言った。

「仲間の想いを受け止めて、それを力に変えるとは、さすが指原。
でも、それだけの力を身につけても、フォーチュン・クッキーと、
その改良した技では、宝(タカラ)のフィールドを破ることはできない。
やはり、最後に勝つのは、この渡辺麻友だってことだね。」

そう言った麻友は、こんどは両手を上に挙げる。

「今度は決めさせてもらうよ。
ダブル・ハート・プラカード!」

麻友が両手を降ろして前でクロスさせると、二つのハート・プラカードが指原に向かっていく。

「!」

そのハート・プラカードの行方を見ていた麻友の目に、
今まで見たことのない構えをする指原の姿が目に入ってきた。

さらに、その指原の両肩に精神体となった咲良と兒玉の姿、
そしてさらにその後ろにも、先程校庭に居た、マジっちゃ学園の
45人以上(HKTメンバー全員)の精神体の姿が見えた麻友は驚愕した。

「メンバーの指原を想う気持ちが、実体化してるっていうの・・?」

そうつぶやいた麻友に対して、指原は言った。

「この技は、指原の思い入れがあるから、戦いでは使いたくなかった。
でも、みんなの想いに応えられるなら、そんなこだわりはどうだっていい。」

そう言った指原は、左肩付近に人差し指と、中指だけを立てた構えから、手を振り上げた。

「掟破りの・・ザ☆ピース!」

挿入歌:ザ☆ピース!(HKT.ver)

指原の手から放たれた衝撃波が、二つのハート・プラカードを切り裂いた。
そして、そのまま衝撃波は宝(タカラ)のフィールドを突き破ると、麻友の身体に向かっていく。

「くっ。」

あわてて両腕をクロスさせて防御態勢をとった麻友だったが、
持ち技二つを破った、指原の”ザ☆ピース”の威力を防ぐことはできなかった。

「うわぁぁぁぁーっ。」

そのまま後ろに飛ばされて、床に倒れた麻友は、もう体を動かすことはできなかった。
そして静まり返った教室を、おぼつかない足取りの指原が近づいていく。

「負けたよ、さっしー。
すごい技だった。」

麻友は負けを認めたのか、さっきまでとは違って、指原のことをニックネームで呼んだ。
それを聞いた指原も、戦いが勝利に終わったことを確信した。

「ハロプロ学園の、道重さんに教えてもらったんだ。」

「あの、伝統校の?それなら、やられても仕方ないね。」

麻友がそこまで話したところで、教室のドアノブを回す音が聞こえて、ドアが開いた。

「さしこちゃん、どこにいるの?」

奈子がドアから顔だけを出して、左右を見渡している。

「あっ、さしこちゃん。こんなとこに居た。」

ドアを半分開けにしたまま、奈子がトコトコ歩いてくる。
そして、指原の様子が分かるまで近づくと、奈子は心配そうな顔になった。

「えっ、さしこちゃん痛そう。大丈夫?」

指原は微笑むと、奈子に言った。

「指原よりも、咲良とはるっぴのほうが大変だから、二人を先に治してあげて。」

「うん、分かったー。」

奈子はそう言ってうなづくと、続いて入ってきた美久と一緒に、咲良と兒玉の治療に向かった。
すると、その様子を見た麻友が口を開いた。

「奈子ちゃん、可愛いね。
でも、いくら可愛くて好きでも、さっしーには、かなわない。
結局、最後には、さっしーのところに行っちゃうんだね。」

奈子を見ていた指原は、「えっ。」という顔をして振り向いた。

「もしかして、指原をハメたのって、奈子を独り占めするため・・?」

麻友はうなづいた。

「さっしーが、うらやましかった。
さっしーの周りには、いつもメンバーがいて、
私はいくら頑張っても、あまり人が近寄って来てくれなくて。
でも、自分の性格もあるから仕方ないと思っていたけど、
奈子ちゃんのことだけは、我慢できなくって、自分でもどうしようもなかった。」

そこまで言った麻友は、涙ぐんでいた。

指原は始めて聞く話だった。
麻友が自分の事をうらやましく思うなんて、思ってもみなかった。
そして、頭に手を当てて考え込んでいた指原は、再び麻友に視線を戻して言った。

「奈子は・・前から、今よりもっと小さいころから知ってるんだ。
今でも時々、お母さんって呼ばれることもあるし、友達とはまた違った関係のような気がする。
でも、奈子は一番好きな人が一杯いて、指原のこともそうかもしれないけど、
麻友も一番だし、最近だと、乃木坂学園の白石さんも一番って言ってた。」

「乃木坂の?」

麻友が聞き返す。

「そう。だから奈子が一番って決められないことを、周りの人が決めることってできないかなって思うんだ。」

そう言って奈子の方を見ると、咲良と兒玉が立ち上がり、
二人の治療を終えた奈子が、にこっと笑ってこちらに近づいてきた。

「ねー、さしこちゃん、麻友ちゃん。仲直りしようよー。」

それを聞いた指原は、麻友に目配せをした。

「奈子ちゃんが言うなら、仲直りするよ。」

麻友の言葉を聞いた奈子は、嬉しそうにぴょんぴょんと、飛び跳ねている。

「わーい、じゃあ今度はみんなで、おでかけしよ。」

そう言った奈子が、おでかけのポーズをすると、指原も

「おでかけ?」

と言って同じポーズをしたので、互いに相手の姿が面白くて、笑ってしまった。
そうして二人が笑っていると、またドアが開いて、
校庭の生徒たちをを倒した、マジっちゃ学園のメンバーが次々と教室に入ってきたので、
奈子はそちらに向かって走って行った。

そしてまた二人きりになったところで、麻友が指原に話しかけた。

「さっしー、私が言うのも何だけど、マジすか学園に戻ってこない?」

そう言われた指原が微笑んで麻友を見たところで振り向き、
マジっちゃ学園のメンバーが集まっている所まで移動した。
そして仲間と談笑する奈子の肩を抱いて言った。

「麻友、ありがとう。
でも、指原には、博多にこんな素敵な仲間が一杯できたんだ。
だから、こっちの学校で卒業することにするよ。」

そこまで言うと、今度は奈子の方を見て話しかける。

「奈子、久しぶりのマジすか学園、どうだった?」

「楽しかったー。さしこちゃんと麻友ちゃんと仲直りできたし、来て良かったー。」

奈子は満面の笑みで答えた。
そして、その笑顔を見た指原は、続けて言った。

「じゃぁ、マジすか学園にも通ってみる?」

「えっ!そんなこと、できるの?」

奈子は目を大きく開いて、驚いた表情をした。

「兼任すればいいんだよ。そうすれば、博多と秋葉原、両方の学校に通えるよ。」

そう言われた奈子は、ますます目を丸くして言った。

「やったぁ、それだったら、奈子、兼任して両方行く~。」

喜んだ奈子は、またうさぎのように、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。
そして指原が振り向くと、麻友が嬉しそうに、以前と同じ優しい笑顔で奈子を見つめていた。

ちょうどその時、中庭で風が吹いた。
季節外れに咲いていた桜の花びらが舞い上がり、指原のいる教室にも入ってきた。
その桜の花びらを見た指原は、何か、自分たちの関係が元に戻ったのを祝福してくれているように思うのだった。

挿入歌:桜みんなで食べた

~完~

※こちらの小説は”マジすか学園”、”マジやけん学園”を参考にしていますが、続編ではなく、完全新作で書かせて頂いています。
前作との関係上、矛盾点もありますが、ご了承下さい。 また、実在の人物とは関係ありません。
※挿入歌で使用した”ザ☆ピース!(HKT.ver)”は、HKT48 九州7県ツアーDVDBlu-rayに収録されています。
※挿入歌で使用した”桜みんなで食べた”は、桜、みんなで食べたのシングルに収録されています。

引用元 : http://48group.blog.jp/archives/1025246298.html